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漕艇用トレーニングマシンの設計

漕艇用トレーニングマシン

この漕艇用トレーニングマシンは、実際の漕艇用ボートを漕いだ時の感覚を味わうことができるように設計・開発され、特に「横揺れ(ローリング)」や「横揺れからの復元」が、水上で味わうものと近い感覚でオールを漕ぐことができることが特徴である。ワンストロークごとのパワー発揮曲線を表示することができる。移動式シートやオールは、競技用の部品を用いている。

漕艇用トレーニングマシンは、実際の漕艇競技の要素を取り入れた形で作られている。
漕艇競技に使う艇では、足の部分が固定され、移動式シートに尻を載せた姿勢で、脚の屈曲・伸展がシートのスライドによって抵抗なく行われる。両手でオールを握り、脚の伸展力と腕の力を利用して、オールを手前に引き寄せる動作を行う。オールを元の位置に戻すときは、膝を屈曲させてシートを尻に近く引き寄せるとともに、体を前傾させて腕を伸ばし、オールをできるだけ前方に移動させる。オールの操作は、オールで水をかくように行う。すなわち、オールの握り側を手前に引くときは、オールをやや立てるように斜め角度にして、握り部分とは逆の先端部分(ブレード)が水をとらえるように想定して手前に引く。オールの握り部分を前方に戻すときは、オールの先端部分(ブレード)が水中から空中に出て後方に運ばれるように想定して動作する。漕艇用トレーニングマシンでは、漕艇競技に用いられる本物のオールを、握り側を残してブレード側(水かき部分)を切断して取り付けてある。切断したブレード側の重量に相当するおもりを握り側のオールの先端に取り付け、全体をして本物のオールと同じ重さバランスが保たれている。



漕艇用トレーニングマシン 側面漕艇用トレーニングマシン 側面写真
オールは、本物の漕艇用オールを半分の長さに切断して、握りに近い分がマシンに取り付けられているが、握りから遠い部分の切断されたオールの重量を補正するようにおもりバランスが取り付けられている。漕艇8人漕ぎ(エイト)の場合のオールにかかる実際の研究データをプログラムに取り込み、この装置でトレーニング者が発揮した力曲線を表示するとともに、それによって進んだ距離を表示できる。漕艇競技中のオールにかかる力などの力学的な研究データは、東大工学部の木下猛教授の提供によるものを利用させていただいた。このトレーニング装置は、漕艇競技の本格的なトレーニング機器として有効である。
漕艇用トレーニングマシン正面

使用者の体型に対する調整機能として、オール支点高さ調整装置(4)、オール長さ調整装置(5)によりオールの支点高さ位置、長さを可変、足置き板(2)は足先の前後・高さの固定位置を可変とし、重量バランス用ウェイト(6)はオール端での取り付け位置および重量の可変可能な構造となっていることから、長いオールを漕いだ感覚を実現することが出来る。

横揺れ・復元力調整装置(7)では、横揺れ角度の可変および復元力を調節する機能を有し、実際の漕艇上における不安定な状態を模擬することが出来る。
WIN_20160121_194843横揺れの復元装置横揺れと復元装置
水上では、水の復元力がボートの横揺れを元に戻す働きをするが、このトレーニング装置では、水の復元力に似た感じで、横揺れが復元される装置が備えられている。
通常のボート漕ぎトレーニングマシンでは、床面が平らであるが、このトレーニング装置では、床下が三角形になっており、シート面が左右に横揺れすることが可能になっている。床下の三角形が、両脇から支えられており、この支え部分が左右に揺れる構造になっている、左右の揺れは、復元力の強いゴムを用いた装置によって元に戻るように作られている。

「漕艇用トレーニングマシン」の実施例を図1に示した。
スライド1

本トレーニング装置は移動式シート(1)、足置き板(2)、オール(3)、オール支点高さ調整装置(4)、オール長さ調整装置(5)、重量バランス用ウェイト(6)、横揺れ・復元力調整装置(7)、制御装置(8)、オール負荷装置(9)、操作・表示パネル(10)から成り立っている。

図2に「オール負荷装置」の構造図を示した。
スライド2

エンコーダ(11)、電磁ブレーキ(12)、トルクメータ(13)、軸変換ギア(14)、増速ギア(15)、ワンウェイクラッチ(16)、オール(3)を示す。
オール(3)を漕ぐ回転方向に対しワンウェイクラッチ(16)は滑り無く回転力を増速ギア(15)に伝え、軸変換ギア(14)、トルクメータ(13)を介して電磁ブレーキ(12)に伝えられる。
電磁ブレーキ(12)のブレーキ力を可変することによりローイング動作時の負荷設定を可能としている。
また、オール(3)を戻す回転方向に対してはワンウェイクラッチ(16)の動作によりオール(3)の回転軸は無負荷となり、実際の漕艇にてオールが空を描く状態に近い感覚となる。
制御装置(8)では電磁ブレーキ(12)のブレーキ力を制御すると共にエンコーダ(11)にて回転速度、トルクメータ(13)にて軸トルクを検出し、これらの情報を力学的情報に変換する。


図3は「操作・表示パネル」の構造図である。
このパネルには「オールの負荷」を設定する機能および「運動量の計測」、「心拍数の表示」、「発揮された力学的情報を時間経過に即して記録計測」などの機能を備えている。
スライド3
図4.結果の表示パネル
スライド4